- 切らない痔の治療法「ジオン注射」
- ジオン注射はこのような方におすすめ
- ジオン注射のメリット・デメリット
- 日帰りでできる「ジオン注射」の治療方法
- ジオン注射の治療の流れ
- いつから便意がでる?ジオン注射後の注意点
- ジオン注射の費用
- ジオン注射のQ&A
切らない痔の治療法「ジオン注射」
お尻の病気である「痔」は大きく、「いぼ痔」と「切れ痔」に分けられます。 ジオン注射とは、いぼ痔のうち、歯状線の内側にできる「内痔核」に対して行われる治療です。ジオン(ALTA)という薬剤を内痔核に注射することでいぼを硬化・縮小し、もとの粘膜へと癒着・固定させます。 いぼ痔の他の治療法としては、塗り薬・飲み薬を使用した薬物療法、手術がありますが、ジオン注射は特別な講習を受けた医師だけが実施することができる治療です。重度の内痔核であっても切らずに治せる治療として、近年注目を集めています。 なお、ジオン注射による治療も、薬物療法や手術と同様、保険が適用されます。どうぞ、安心してご相談ください。
ジオン注射で治療ができる痔の種類
直腸の粘膜とお尻の皮膚との境目のラインを「歯状線」といいます。そして歯状線の外側にできたいぼ痔を「外痔核」、歯状線の外側にできたいぼ痔を「内痔核」といいます。 ジオン注射が有効になるのは、このうちの「内痔核」です。
ジオン注射はこのような方におすすめ
ジオン注射は、内痔核に有効となる治療です。特に、排便時または常にいぼが肛門の外に出る「脱肛」を伴う内痔核がある方におすすめしたい治療です。
それ以外にも以下の項目に該当する方は、お気軽に当院にご相談ください。
- 排便時の出血がある方
- 常にいぼが肛門の外に出ている方
- 肛門に違和感がある方
- 便が出にくい、細いと感じる方
- 内痔核があり、薬物療法で十分な効果が
得られない方 - 内痔核があるが、手術は避けたいという方
- 排便時にいぼが外に出る方
(その後、自然に元に戻る・押すと元に戻る)
ジオン注射が受けられない方
一方で、以下に該当する方は、ジオン注射を受けることができません。予めご了承ください。
- 妊娠中の方、授乳中の方
- お子様
- 常にいぼが肛門の外に出ている方
- 人工透析を受けている方や
著しく腎機能が低下している方 - 嵌頓痔核の方(※)
- 前立腺がんなどの治療において
放射線療法を受けた方 - 潰瘍性大腸炎の方
- その他、ジオン注射が適当ではないと
医師が判断した方
※嵌頓痔核…脱肛した内痔核が肛門で締め付けられ、うっ血した状態です。
ジオン注射のメリット・デメリット
メリット
- 入院が不要で日帰りで受けられる
- 手術と比べ合併症のリスクが少ない
- 手術と比べ、痛みが出にくい
- 常に脱肛している重度の内痔核に対しても有効
- 保険が適用される
- 手術と組み合わせることも可能
デメリット
- 一時的な発熱、痛み、排便のしづらさなどの副作用がある
- 新しい治療法であり、長期の予後データがない
- 対応している医療機関(医師)が少ない
- 切れ痔、外痔核は適応外
- 約1~2割程度で再発が認められることがある
日帰りでできる「ジオン注射」の治療方法
ジオンという薬剤を、内痔核1つあたりに4カ所注射します。これにより、内痔核へと流れる血流の量が減少し、内痔核の硬化・縮小、粘膜への癒着・固定を促します。
通常、注射の翌日には出血が減り、1週間~1ヶ月をかけて内痔核が小さくなります。それに伴い、出血の程度、脱肛の頻度も落ち着きます。
なお、麻酔をかけますので、治療による痛みは基本的にありません。
薬剤について
ジオン注射では、ジオン(ALTA)という薬剤を使用します。
硫酸アルミニウムカリウム水和物とタンニン酸で構成されます。
硫酸アルミニウムカリウム水和物:内痔核の出血・脱肛を改善する働きがあります。
タンニン酸:硫酸アルミニウムカリウム水和物の作用を高める役割を担います。
ジオン注射の治療の流れ
1麻酔
局所麻酔をかけます。
2ジオン注射
1つの内痔核に対して、4カ所(上極部粘膜下層・央部粘膜下層・中央部粘膜固有層・下極部粘膜下層)のジオン注射を行います。
3注射翌日~
個人差はありますが、注射の翌日から出血の減少が期待できます。多くは、2~3日で出血が止まります。
4注射後1週間~1ヶ月
脱肛、肛門の腫れ、痛みなどの内痔核の症状が徐々に改善していきます。
いつから便意がでる?ジオン注射後の注意点
ジオン注射は、手術と比べて低侵襲であり、副作用・合併症の少ない治療です。
しかし、以下のような注意点、日常生活中の制限などがございます。
ジオン注射後の排便
注射後、その日から排便は可能です。ただし、肛門に負担をかけないよう、いきむ時間・排便する時間をあわせて5分以内としてください。
便が残っている感覚があっても、無理な排便はおやめください。
ジオン注射後の生活
食事
注射後3週間は、唐辛子・ワサビといった肛門に刺激を与える香辛料をお控えください。ゴマ、イチジクの種など、細かい粒状の食品も同様にお控えください。
排便がスムーズになるよう、水分、食物繊維を多めにとることをおすすめします。
飲酒
注射後2週間は、飲酒をお控えください。ただし、症例によって異なりますので、医師の指示があればそちらをお守りください。
シャワー・入浴
通常、シャワーは当日から、入浴は翌日から可能です。
日常生活
通常、デスクワークは翌日から可能です。重い物を持つ・運ぶなどの肉体労働については、医師の許可があるまで避けてください。
ただしデスクワークの場合も、30分ごとに立ち上がりお尻の圧迫を解消する等の配慮が必要です。
自転車・バイクの運転、長時間の車の運転は、注射後2週間、お控えください。
ジオン注射の費用
検査内容 | 費用 |
---|---|
ジオン注射 (3割負担の場合) |
約17,500円 |
ジオン注射 (1割負担の場合) |
約5,800円 |
ジオン注射のQ&A
ジオン注射は痛いですか?
麻酔をかけた上で行う治療であるため、基本的に痛みはありません。ただし、治療の副作用として、一時的な痛み、腫れが起こることがあります。次第に軽快していきますので、ご安心ください。
ジオン注射で完治しますか?
手術と同等の、ほとんどの場合完治が期待できる治療です。ただし約1~2割で、再発が認められます。
ジオン注射の翌日は通院不要ですか?
注射の翌日と約1週間後に、経過を観察するためにご来院いただいております。場合によってはそれ以降も数度、ご来院いただくことがあります。注射翌日の受診は基本的に不要ですが、出血がひどい・まったく排便できない等の異常があれば、すぐにご相談ください。
ジオン注射の効果はいつから出ますか?
出血を伴う内痔核の場合、多くは翌日から出血量の減少が認められ、2~3日後には出血が止まります。その後、1週間から1ヶ月程度をかけて、脱肛、肛門の腫れ、痛みなどの内痔核の症状全般が改善していきます。