血便・下血とは
血便も下血も、便に血が混じっている状態を表す言葉です。
一般的には、鮮やかな赤い血が混じっている便だけでなく、暗い赤色の便、粘り気のある血便、墨汁のように黒い便なども、血便や下血と表現されます。
このような血便・下血の症状は
ありませんか?
- 便をした後、トイレットペーパーに血が付着する
- 鮮やかな赤い血が混じった便が出る
- 便に粘液が付いている
- 便をしてもスッキリしない
- 腹痛がある
- 体重が減ってきた
- 下痢と便秘を繰り返す
- お腹が張って苦しい
- 便が細くなった
血の色や状態、他に症状があるかどうかなど、注意深く観察するようにしましょう。
また、自己判断は危険ですので、必ず、医療機関を受診しましょう。
血便・下血の原因
血便の原因は、腸内の細菌感染や消化器系の病気など、実に様々です。
例えば、鶏肉や卵を介して感染するカンピロバクターやサルモネラ菌、生魚から感染する腸炎ビブリオ菌、生肉から感染するO157といった細菌が原因となる食中毒が挙げられます。他にも、食道・胃・十二指腸・大腸の病気や、痔など、様々な病気が血便を引き起こす可能性もあります。
血便・下血を伴う病気
便に血が混じっている場合は、たとえ少量であっても、重大な病気が隠れている可能性があります。
ご自身で判断せず、お気軽に当院にご相談ください。
痔(いぼ痔・切れ痔)
痔による出血は、「いぼ痔」や「切れ痔」で多くみられます。便に鮮やかな赤い血が付着したり、排便時に出血したりします。
痔による出血は、発熱や下痢などを伴わないことが多く、便秘を合併しているケースが多くみられます。
排便時に肛門に違和感や痛みを感じることがあり、特に切れ痔では、排便時に強い痛みを生じます。
切れ痔の出血量は比較的少ないですが、いぼ痔の場合は、大量に出血することがあります。
いぼ痔の中でも、肛門の内側にできる内痔核は、出血するまで気づかないこともあります。
痔は、早期に適切な治療を受けることで、比較的楽に治すことができます。また、便秘になりにくい生活習慣を心がけることで、再発を予防することも可能です。
当院でも、痔の日帰り手術が可能ですので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
大腸がん・大腸ポリープ
大腸がんになると、便に血が混じったり、粘液が付着したりすることがあります。
出血量は様々で、少量の場合もあれば、大量に出血することもあります。
また、便秘や下痢を繰り返したり、便をしてもスッキリしなかったり、腹痛が起こることもあります。
大腸ポリープがある場合も、便がポリープとこすれることで、出血し、血便が出る場合がありますが、出血量はごく少量であることが多く、他の症状は伴わない場合がほとんどです。
ただ、大腸ポリープや大腸がんは、できる場所によっては、出血を伴わずに進行することもあります。
自覚症状が少ない病気ですので、40歳を過ぎたら、定期的に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
また、大腸がんの多くは、大腸ポリープががん化したものです。大腸内視鏡検査では、大腸がんになる前のポリープの段階で切除できるため、早期発見・早期治療、そして大腸がんの予防に繋がります。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は、腸に慢性的な炎症が起こる病気で、潰瘍性大腸炎とクローン病と大きく2つに分けられます。主な症状は、下痢、血便、腹痛などがありますが、人によって程度や頻度が異なり、慢性的に続くのが特徴です。発熱、体重減少、貧血などを伴う場合もあります。
潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こり、潰瘍ができる病気です。一方、クローン病は、口から肛門までの消化管のどこでも炎症が起こることがあります。症状の悪化と緩解を繰り返すことが多く、ストレスや食生活などが悪化の引き金になることがあります。
放置すると栄養不足や脱水症状を引き起こす可能性や大腸がんのリスクが高まる可能性がありますので、早めに医療機関を受診することが大切です。
大腸憩室症
大腸憩室症は、大腸の壁に「憩室」と呼ばれる小さな袋状の突出ができる病気です。
大腸憩室症自体は、多くの場合、自覚症状はありません。
しかし、憩室内の粘膜は傷つきやすく、便などが溜まって炎症を起こすと、出血がみられることがあります。
大腸憩室症の出血は、粘液や血液が混じった便として現れることが多いですが、大量出血になることもあるので注意が必要です。
虚血性大腸炎
虚血性大腸炎は、大腸への血流が悪くなることで起こる病気です。突然の血便と左側の腹痛で発症することが多くみられます。
動脈硬化や糖尿病があると、虚血性大腸炎のリスクが高まります。
高齢者に多い病気ですが、近年では若い世代にもみられるようになってきています。
感染性腸炎
感染性腸炎は、細菌やウイルスによって腸に炎症が起こる病気です。血便、下痢、発熱、腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。血便を伴う感染性腸炎は、ほとんどの場合、細菌感染によって起こります。
原因となる細菌としては、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、病原性大腸菌などが挙げられます。
特に、アメーバという寄生虫によって起こるアメーバ赤痢は、重症化しやすいため注意が必要です。
感染性腸炎の治療では、原因となる菌を特定するために、便培養検査を行います。
治療は、水分補給や抗生物質の内服、点滴などが中心となります。
偽膜性腸炎
偽膜性腸炎は、抗生物質の使用によって腸内細菌のバランスが崩れ、特定の細菌が異常に増殖することで起こる腸炎です。
症状としては、粘液や血液が混じった激しい下痢、腹痛、発熱などがあります。
通常、腸内には、健康を維持するために、善玉菌と悪玉菌がバランスを保って生息しています。
しかし、抗生物質を長期間使用すると、腸内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増殖しやすくなります。
その結果、特定の細菌が異常に増殖し、毒素を産生することで、腸粘膜に炎症が起こるのが偽膜性腸炎です。
血便・下血がでた時の診断と治療
血便の原因は実に様々です。そのため、まずは原因を特定するために、問診、診察、検査を行います。
問診では、症状や食事内容、過去の病気、現在服用中の薬などについて詳しくお伺いします。
診察では、おなかの状態などを確認します。
検査は、血液検査や便検査などを行い、感染の有無や炎症の程度などを調べます。
出血が続いている場合は、出血している箇所を特定するための検査を行います。
出血源を調べる検査には、肛門や直腸に異常がないかを指で触れて調べる直腸診、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を観察する大腸カメラ検査、口から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸の内部を観察する胃カメラ検査、CT検査、腹部超音波検査を行います。
これらの検査結果に基づいて、原因に合わせた適切な治療を行っていきます。
鮮血や1回だけの血便は
心配いらない?
便に血が混じっている場合、その色や状態である程度、出血部位を推測することは可能です。
しかし、見た目だけで、病気の種類や重症度を判断することはできません。
たとえ、医師が実際に便を確認したとしても、見た目だけで判断することは難しいです。
「心配ない血便」は、基本的にはありません。
自己判断は危険ですので、便に血が混じっている場合は、必ず医療機関を受診するようにしてください。
すぐに受診できない場合でも、以下のいずれかに当てはまる場合は、様子を見て、症状の変化に注意しながら、後日医療機関を受診することをおすすめします。
- 硬い便が出た際に、肛門が少し切れてしまった
- 軽度の痔の治療中で、少量の出血がみられる
- 軽い食あたりを起こしている
- 抗生物質を服用した後である
大切なのは、自己判断せず、専門医の診断を受けることです。 早期に適切な治療を受けることで、病気を悪化させずに済む可能性が高まります。
受診の目安とは?
黒い便や赤い血が混じった便が出た後、めまい、冷や汗、顔面蒼白、意識消失などの症状が現れた場合は、大量出血の可能性があります。
このような場合は、すぐにご家族や周囲の方に助けを求め、救急車を要請してください。
また、激しい腹痛がある、黒い便や赤い血が混じった便が続く場合も、早めに受診しましょう。
受診する際には、可能な限り、便の状態が分かるように、スマートフォンなどで撮影しておくと、医師に状況が伝わりやすくなります。
また、普段服用している薬がある場合は、お薬手帳を持参しましょう。
お早めに消化器内科まで
ご相談下さい
便に血が混じっている場合は、放置せずに、消化器内科を受診しましょう。
貧血や腹痛を伴う場合は、特に緊急性が高い可能性があります。
お早めに医療機関を受診するようにしてください。
当院では、消化器疾患の専門医が、大腸内視鏡検査を含め、専門的な診療を行っております。
少しでも気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。