- 機能性ディスペプシア(FD)とは
どんな病気? - 機能性ディスペプシアの症状チェック
- 機能性ディスペプシアの原因
- 胃カメラは必要?
機能性ディスペプシアの検査方法 - 機能性ディスペプシアの治療方法
- ストレスで悪化する?
機能性ディスペプシアとストレスの関係
機能性ディスペプシア(FD)
とはどんな病気?
胃の痛みや胃もたれなどの症状が続くにもかかわらず、内視鏡検査で胃炎や逆流性食道炎などの異常が見つからない場合、機能性ディスペプシアと診断されます。
従来は、内視鏡検査で異常が見つからなくても、症状がある場合とない場合がありました。
しかし近年では、検査結果に関係なく症状がある場合は機能性ディスペプシアと定義されるようになっています。
機能性ディスペプシアの
症状チェック
胃もたれや胃の痛みなど、胃の症状で悩んでいる方は機能性ディスペプシアの可能性も検討してみましょう。
機能性ディスペプシアでは、内視鏡検査で胃や十二指腸に異常がないにも関わらず、以下のような症状が現れます。
- みぞおち辺りの痛み
- みぞおち辺りの灼熱感
(焼けるような感じ) - 食後の胃もたれ
- 早期膨満感
(食事を始めるとすぐに
お腹がいっぱいになる)
これらの症状に心当たりがあり、医療機関の診察で胃や十二指腸に異常がないと診断された場合は、機能性ディスペプシアの可能性があります。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアは、胃の運動機能や知覚機能の障害によって引き起こされると考えられています。
胃は通常、食べ物が食道から入ると上半分を緩める適応性弛緩を起こし、消化が進んだ段階で下半分を緊張させて十二指腸へ消化物を送る胃排出能が働きます。
さらに、胃は自身の働きを感知する知覚機能も備えています。
機能性ディスペプシアは、これらの機能に何らかの原因で障害が生じることで、様々な症状が現れると考えられています。
胃の運動機能
機能性ディスペプシアでは、適応性弛緩と胃排出能に障害が起こることで、それぞれ異なる症状を引き起こすと考えられています。
適応性弛緩とは、食道から入ってきた食べ物を胃にしっかり貯める機能です。
この機能に障害が起こると、胃が十分に膨らむことができず、少し食べただけで満腹感を感じたり、吐き気などの症状が現れたりします。
一方、胃排出能は、消化が終わった食べ物を胃の下部から十二指腸へ送り出す機能です。
この機能が低下すると、食べ物が胃に留まった状態が続くため、胃もたれの症状が現れます。
胃の知覚機能
消化管の粘膜の状態を感知するセンサーが過敏になっていると、わずかな刺激でも胃痛、胃もたれ、吐き気といった症状が現れやすくなります。
ピロリ菌感染
ピロリ菌は、胃酸の中でも生息できる菌で、胃粘膜に炎症を引き起こし、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんのリスクを高めます。
機能性ディスペプシアは、ピロリ菌感染が原因で症状が出ている場合があります。
このような場合は、ヘリコバクター・ピロリ関連ディスペプシアと呼ばれ、ピロリ菌の除菌治療を行うことで症状が改善することが期待できます。
そのため当院では、機能性ディスペプシアの症状があり、ピロリ菌感染が確認された患者様には、積極的にピロリ菌の除菌治療をお勧めしています。
生活習慣
機能性ディスペプシアは、暴飲暴食、高脂質や糖質に偏った食事、香辛料やコーヒー・お酒などの過剰摂取、喫煙習慣、睡眠不足、過労などの生活の乱れにより症状が悪化することがあります。
ストレス
ストレスにより自律神経が乱れることで、消化管の機能障害が起こり機能性ディスペプシアの症状が現れることがあります。
胃酸
食生活の乱れや胃排出能の低下などが原因で胃酸が過剰に分泌されると、胃痛や胃もたれなどの症状が現れやすくなります。
これは、過剰な胃酸が胃や十二指腸の知覚機能を刺激し、十二指腸にまで流れ込むことで症状を引き起こすと考えられています。
胃カメラは必要?
機能性ディスペプシアの検査方法
機能性ディスペプシアの診断を行うためには、胃炎や胃潰瘍、胃がんなど他の病気がないかどうかを調べる必要があります。
そのため、下記のような検査を行います。
その上で、患者様の症状などを総合的に判断し、診断を確定します。
胃カメラ(胃内視鏡)
胃カメラ(胃内視鏡)検査では、胃粘膜の状態を詳しく観察し、炎症、萎縮、潰瘍、がんなどの有無を調べます。
また、必要に応じて組織を採取し、ピロリ菌感染の有無を調べることもあります。
CT検査
腹部超音波検査と同様に、肝臓、胆のう、総胆管、膵臓、大腸・小腸といった、胃の周辺臓器に異常がないかを調べます。 腹部超音波検査よりも短時間で検査を行うことができ、臓器全体を俯瞰的に評価できます。
機能性ディスペプシアの治療方法
機能性ディスペプシアの治療では、ストレスを避け、生活習慣や食生活を改善することが重要です。
これらの改善を試みても症状が良くならない場合は、薬物療法を検討します。
生活習慣・食習慣の改善
自律神経を整えるには、規則正しい生活を送り、胃腸に負担をかけないことが大切です。
自律神経が乱れると、胃腸の働きも弱くなります。
そこで、食事は少量ずつ、よく噛んで食べ、水分もしっかり摂るようにしましょう。
食べ過ぎは禁物です。また、食後すぐに運動すると胃腸に負担がかかるため、控えるようにしてください。
お薬による治療
機能性ディスペプシアの治療には、胃の運動を促進する薬、胃酸の分泌を抑える薬、漢方薬、抗不安薬や抗うつ薬を使用します。
中には胃カメラの検査をしないと、保険的に出せないお薬もあります。
ストレスで悪化する?
機能性ディスペプシアと
ストレスの関係
機能性ディスペプシアは、身体的な不調だけでなく、心の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
過去のつらい経験や過労、ストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れると、消化管の機能に不調をきたし、機能性ディスペプシアを発症することがあります。
症状が続くと、仕事や勉強に集中できなくなり、生活の質が著しく低下する可能性も懸念されます。
機能性ディスペプシアは、症状が改善したり悪化したりを繰り返すため、長期的な治療が必要となる場合もあります。
治療が長引くと、ストレスを感じて症状が悪化するなど、悪循環に陥ってしまうケースも少なくありません。生活の質の低下や精神的な負担から、うつ症状が現れる可能性もあるため注意が必要です。
このように、胃の不調は、心身の両面に影響を及ぼす可能性があります。