胃がんとは
胃は、食べ物を一時的に貯蔵し、消化液と混ぜ合わせて消化を進め、その後腸へと送る役割を担っています。
胃がんは、この胃の粘膜細胞から発生するがんです。
がん細胞は増殖しながら粘膜から筋層、漿膜へと深く浸潤し、最終的には胃の外部や周囲の臓器にまで広がっていきます。
胃がんは一般的に、胃壁に隆起や潰瘍を作るため、内視鏡検査などで比較的早期に発見できます。
しかし、「スキルス胃がん」と呼ばれるタイプでは、胃壁が硬く厚くなるものの、目立った隆起や潰瘍が見られないことが多く、発見が遅れる傾向があります。
スキルス胃がんは進行が速いため、症状が現れた時にはすでに進行している場合も少なくありません。
胃がんの原因
胃がんの最大の原因は、ピロリ菌感染です。
幼少期にピロリ菌が胃粘膜に感染すると、長期間にわたって炎症が続く慢性胃炎を引き起こします。
慢性胃炎が進行すると、胃粘膜が萎縮し、萎縮性胃炎に変化します。
萎縮性胃炎は、胃がんのリスクが非常に高くなるため注意が必要です。
ピロリ菌は胃粘膜に直接毒素を注入し、がん化を促進する可能性も指摘されています。
ピロリ菌感染に加え、ストレス、塩分の多い食事、喫煙なども胃がんのリスクを高める要因と考えられています。つまり、ピロリ菌感染に加えて、これらのリスク要因が重なる場合は特に注意が必要です。
胃がんのリスクを上げる
習慣・要因
胃がんの明確な原因は、まだ完全には解明されていませんが、発症リスクを高める要因はいくつか明らかになっています。
最も大きなリスク要因は、ピロリ菌の感染です。
ピロリ菌は、胃粘膜に持続的な炎症を引き起こし、胃がんの発症率を大幅に高めることが知られています。
その他、以下のような生活習慣も、胃がんのリスクを高める要因となります。
食生活の乱れ・肥満
肥満は、胃がんだけでなく、心筋梗塞、脳卒中、膵臓がんなど、さまざまな病気のリスクを高めることが知られています。
BMIが25以上の方は肥満と定義され、これらの病気のリスクが高くなるため、適正体重を維持することが重要です。
また、塩分の多い食事も胃がんのリスクを高める要因となるため、減塩を心がけるようにしましょう。
喫煙
喫煙は、胃がんのリスクを上昇させる大きな要因の一つです。
喫煙者は、非喫煙者と比べて胃がんのリスクが1.5倍も高くなります。
遺伝
血縁者に胃がんの既往がある場合も、胃がんの発症リスクを高める要因の一つです。
胃痛が続くのは胃がんの
可能性あり?症状チェック
胃がんの初期症状
- 胸やけ・食欲不振
- 胃の痛み
- 体重が減る
- 食べ物が飲み込みづらい
- 黒色便(タール便)
他の病気と同じ症状が多く、胃がん独自の初期症状とは言い切れません。
胃がんと症状が似ている
他の病気
胃がんと症状が似ている病気には以下のようなものがあります。
胃潰瘍
胃潰瘍は、胃の粘膜がただれ、組織が崩れている状態です。
胃炎が悪化したり、過労やストレス、ピロリ菌感染したりすることで発症します。
胃潰瘍を発症すると、嘔吐、げっぷ、食欲不振、吐血、下血の症状が現れます。
胃炎
胃炎とは、胃の粘膜に炎症を起こしている状態です。
過度のストレスや食べ過ぎ、喫煙、アルコール、ピロリ菌感染が原因となります。
胸やけ、胃痛、食欲不振、吐き気などの症状が現れます。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃内にある胃液や内容物が食道に逆流し、食道の粘膜が炎症を起こしている状態です。
食道と胃のつなぎ目にある筋肉が緩むこと(食道裂孔ヘルニア)で発症することもあります。
食べ過ぎ・早食いの習慣がある人、脂っこいものが好きな人、食べた後すぐ寝る人が起こしやすくなります。
酸っぱいものが上がってくる感覚、胸やけ、胸やみぞおちの痛み、のどの違和感などの症状が現れます。
胃がんの初期症状は、胃炎や胃潰瘍などの症状と同じで、軽症であるため軽視されがちです。
そのため、胃部不快感や食欲不振があっても受診せず、胃がんの発見が遅れます。
胃がんは健康診断で胃カメラやバリウム検査を受けて発覚することがほとんどです。
症状が長引く頃には胃がんが進行していることもあり、定期的に胃カメラや健康診断を受けることが大切です。
胃がんの検査方法
胃がんの検査には、胃カメラ検査や胃部X線検査(バリウム検査)があります。
胃部X線検査では、バリウムを飲みX線で胃部を観察します。
胃部X線検査は死角が発生してしまうため、胃がんなどの病変を見逃してしまうことがあります。
一方で胃カメラ検査であれば、直接粘膜を観察することができます。
また特殊な光や薬剤を使って病変部を強調したり、疑わしい組織を採取して病理組織検査を行ったりすることが可能です。
より確実な胃がんの発見のためには、やはり胃カメラ検査をおすすめします。
胃がんの治療方法
胃がんの治療方法は、病気の進行度によって異なります。他臓器への転移がみられない早期胃がん(ステージⅠ~Ⅲ)の場合は、内視鏡治療または手術が行われ、他臓器へ転移している進行胃がん(ステージⅣ)につきましては、抗がん剤を用いた化学療法が実施されます。
日帰りで可能な治療は当院でも施行可能ですが、入院が必要な治療に関しては、責任を持って適切な病院へご紹介いたします。
早期胃がんの場合
早期胃がんの治療法は、内視鏡治療と外科手術の2つが主な選択肢です。
どちらを選ぶかは、がんの広がり方や深さ、種類など、様々な要因を総合的に判断して決定されます。
特に重要なのは、がんがリンパ節に転移しているかどうかです。
内視鏡治療
内視鏡治療は、お腹を開けずに、内視鏡を使ってがんの部分を直接切除する方法です。
全身麻酔の必要がなく、入院期間も短く、身体への負担が少ないというメリットがあります。
また、胃の形を大きく変えることもないため、食生活への影響も少ない点が特徴です。
ただし、がんがリンパ節に転移している可能性がある場合は、この治療法を選ぶことはできません。
外科手術
手術では、お腹を開けてがんの部分を切除する方法です。がんがリンパ節に転移している場合や、内視鏡治療では対応できない場合に選択されます。
がんの広がり具合によっては、リンパ節も一緒に切除する必要があります。
外科手術は、内視鏡治療に比べて身体への負担が大きいですが、がんを完全に取り除くことができるため、再発のリスクを低くすることができます。
進行胃がんの場合
化学療法
進行した胃がんに対して、患者様の状態を考慮し、化学療法を検討いたします。
具体的には、胃以外の臓器への直接浸潤や転移が認められる場合、あるいは他の臓器の機能低下により手術が困難な場合などに化学療法が選択されます。
がんの広がり具合によって、手術前にがんを小さくするため化学療法や、術後の再発防止のための化学療法を手術と併用することもあります。
内視鏡治療や外科手術は、入院が必要になる治療法のため、適応の患者様には最適な病院をご紹介いたします。
胃がんは、早期発見により、治療の選択肢も増え、身体に負担の少ない内視鏡治療で完治が可能な病気です。
治療後も、定期的に検査を受けることで、再発の早期発見にもつながります。早期発見・早期治療のために定期的な胃カメラ検査を受けましょう。